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東京地方裁判所 平成6年(特わ)1730号 決定

本店所在地

東京都江戸川区西瑞江三丁目五番一五号

常陽興産株式会社

右代表者代表取締役

作佐部智子

本籍

東京都江戸川区西瑞江三丁目五番地一五

住居

同都同区西瑞江三丁目五番一五号

会社員

作佐部信行

昭和二一年一〇月一〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人田中紘三各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人常陽興産株式会社を罰金一六〇〇万円に、被告人作佐部信行を懲役一〇月に処する。

被告人作佐部信行に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人常陽興産株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都江戸川区西瑞江三丁目五番一五号に本店を置き、遊技場(ゲーム機設置)の経営等を目的とする資本金四〇〇万円の株式会社であり、被告人作佐部信行(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成元年七月一日から平成二年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三五八九万〇二八二円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年八月二九日、東京都江戸川区平井一丁目一六番一一号所在の所轄江戸川税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が一九三万七四六二円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成六年押第一四二九号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一三四七万六〇〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成二年七月一日から平成三年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三八五六万五〇七三円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年八月三〇日、前記江戸川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一三七〇万一八〇〇円(別紙5のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成三年七月一日から平成四年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二五二八万〇二七六円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年八月二六日、前記江戸川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九一万〇五六六円で、これに対する法人税額が一九万六八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四六一六万二〇〇〇円と右申告税額との差額四五九六万五二〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人及び被告会社代表者の当公判廷における各供述

一  被告人の検察官に対する供述調書七通

一  作佐部智子(六通)及び門田茂の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、給料手当調査書、雑費調査書、雑収入調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

判示第一及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の有価証券売買損益調査書

判示第二及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の繰越欠損金の当期控除額調査書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の申告欠損金調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成六年押第一四二九号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の租税公課調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の賞与調査書及び修繕費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(第一の事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、法人税法一五九条一項(第一の事実の罰金刑の寡額につき前同)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、ゲームセンター経営等を業とする被告会社の社長であった被告人が、売上を除外するなどして、三事業年度にわたり、合計七三一四万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率もうち二年度は一〇〇パーセント、一年度は約九九・六パーセントと極めて高率である。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できないところである。

他方、被告人及び被告会社の経理責任者(現代表者)作佐部智子は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件三事業年度分の法人税を附帯税を含め完納していること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1 修正損益計算書

〈省略〉

別紙2 修正損益計算書

〈省略〉

別紙3 修正損益計算書

〈省略〉

別紙4 ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙5 ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙6 ほ脱税額計算書

〈省略〉

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